Oyabu Dairy Farms

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Oyabu

Dairy Farms

オオヤブデイリーファーム

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【次の世代を育むため、わが家のミルクに出来ること】

オオヤブデイリーファーム

■牧場紹介

オオヤブデイリーファームは、熊本県合志市(こうし・仔牛)という酪農業に馴染みのある名前の街にあります。この辺りは菊池台地と呼ばれ、西日本でも有数の酪農の盛んな地域です。

当牧場の起源は、父である初代正勝が高校入学時に、祖父の飼っていた熊本赤牛の隣でホルスタインを1頭導入し、飼育しながら学校に通っていた頃にスタートしました。

それから初代正勝は、北海道や福岡での実習の後、1975年にキング式の西欧風の牛舎を建てて専業酪農家として事業を開始。今でも自家産堆肥で畑土を作り、無化学肥料で飼料を栽培しながら約90頭の乳牛を育てております。

それから小学校教諭であった母真裕美と結婚した頃、地域の宅地化が進んできたことをきっかけに、地元の農業や酪農を新しい住民の方に知って頂こうと、地域の農家や有志の方々と共に農業イベントを開始。その一端として牧場体験が始まり、全国酪農教育ファームの立ち上げにも参加。その後酪農教育ファームの認証を受け、現在も母を中心に牧場探検や搾乳体験・トウモロコシ畑迷路等を通して「命の温かさと命(食)の循環」を体感していただく活動を行っております。

その後、私2代目裕介の就農後、ミルクに何かを添加して付加価値を付けるのではなく、わが家のミルクが一番輝く「舞台」を創り上げる為に製造部門を設立。

「飼養管理と遺伝改良」によってオメガ3脂肪酸強化牛乳やベータカゼインA2ミルクなどの「搾りたての生乳そのものが特別な特徴を持つ」飼養管理を行いながら、商品を全国・世界に届けている。

ものづくりや海外旅行が好きで酪農家になった事もあり、世界中の酪農家さんが「どんな想いでミルクを商品に表現しているのか」を知るために、世界約22ヵ国の乳製品を食べ歩いている。

その経験を元に、自社のミルクの違いを表現して作り上げたわが家らしい商品をご提案していくことで、たくさんの方に選ばれる生産者になっていきたいと考えております。

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■小さな酪農家の危機そして絶望からの挑戦

2011年頃、私が就農後初めての生産調整を体験し、牧場の存在意義や私自信の酪農家としての存在価値について考えるようになりました。

酪農業界は農政や為替などの外部からの波風に翻弄されやすい業界で、約10年毎に生乳の生産調整が発生し、最悪の場合、牛乳を廃棄しないといけなくなる牧場もありました。

堆肥から畑土を作り、飼料作物を栽培し、牛を飼い、一滴のミルクが生産されるまでには、母牛のお腹の中に命が宿って約3年かかります。

それを廃棄する事はとても辛く、しかも廃棄の際は「産業廃棄物」扱いになり、下水にも流せません。両親や私が人生の時間の多くを費やして生産した牛乳が産業廃棄物扱いされることがとても衝撃でした。

牛乳は一元集荷・多元販売なので、他の牧場のミルクと一緒にパック詰めされて販売されるため、わが家の牧場が無くなったとしても他の牧場のミルクがパックに充填されていくだけなので、我が家の牧場が無くても誰も困らないという事が、生産者として存在価値がないように思えて寂しさや危機感を感じました。

また、酪農家は自分で生産した牛乳を直接販売する事が、許可無しにはできません。

乳等省令により、保健所の厳しい審査をクリアし、高い衛生管理技術や高価な設備を備えた設備を準備しなければならない為、牛乳を直接販売するための製造許可の取得は、製造許可の中でもハードルが高いとされています。

例え、設備投資の資金的な壁を越え製造許可を取得したとしても、朝晩の搾乳や昼間の飼料畑作

業などの日常の酪を割くことが難しい状況です。

そうした中で私は、牧場から直接お客様にわが家のミルクを色んなカタチでご提案し、『選ばれる生産者になることこそ、当牧場の酪農牧場としての存在意義に繋がる』と考え、生産調整などの外からの波風に強い生産者になるために、乳製品製造許可に1年がかりで挑戦し、どうにか取得することができました。

製造を開始した始めの頃は、朝は搾乳、昼は畑、夕方の搾乳が終わった後で製造を開始。日付が変わった頃に清掃が終わり、明け方4時に発酵状態をチェックして、朝の搾乳が始まる…という具合でした。

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■なぜヨーグルトなのか

世の中には沢山の大手メーカーや酪農家さんが乳製品を販売している中で、私は当牧場の生乳の特徴を目で見てもわかるように、『ミルクの違いを表現する』為にヨーグルトの製造を開始致しました。

牛乳は、飲み比べても違いが分かりにくい。乳脂肪率の高低だけでは味覚での「濃さ」は分かりません。乳中のナトリウム分の多さでも「濃さ」を感じてしまいます。

違いがわかりにくい商品は、乳製品=北海道・阿蘇といったイメージで選ばれてしまい、無名な生産者は選ばれにくいので、わが家の牛たちに申し訳ないので、牛乳の製造の道は選びませんでした。

アイスクリームは、フレーバーや副原料の特徴が強く出る為、牛乳の違いが分からなくなってしまいます。

チーズは、製造工程でホエーとして牛乳の90%を捨ててしまわないといけません。土を作り畑から飼料を栽培して生産した牛乳なので、酪農家としてその一部でも無駄にしたくありませんでした。

唯一、ヨーグルトだからこそ、ミルクの品質の違いを表現することができることが分かりました。

通常、日用食品の一つであるヨーグルトは、どんなヨーグルトであれ「白いゲル状」で3個¥100ほどのイメージが一般的だと思います。どんなに生乳の生産にこだわったヨーグルトでも、「いつどこで」できたか分からない脱脂粉乳などの乳製品でできたヨーグルトでも、見た目は白いゲル化したものになってしまうために、見た目だけでは違いが分からないと思います。

しかし、「ノンホモゲナイズ製法」により、乳質の高さを「クリーム層」に表現することで、見ただけで違いが分かるように表現することができます。

また、天然の発酵のチカラで乳酸菌数が多く増えたり、当牧場独特の健康機能性を備えた商品となったり、発酵の過程で乳糖が分解されている為、ヨーグルトは消費者の方のお腹にとても優しい乳製品となります。

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■目指す酪農家としての在り方

『あって良かったと思っていただける牧場になること。そして必要とされる生産者になること。』

「美味しく機能的な商品」をご提案していくことで、商品も牧場環境も楽しんでいただけるような酪農家になりたいと考えております。

その道を追求していく中で、九州経済産業局・九州バイオクラスター協議会(KBCC)による「フランス オメガ3プロジェクト」にスターティングメンバーとして参加し、渡仏。BLEU BLANC COEUR(BBC:有機農産物組合)を訪れました。

BBCは、オメガ3脂肪酸に富む亜麻種子に着目し、農畜産物の品質向上やその成分を活かした「人の健康」に役立つ商品づくりに取り組んでいる団体です。

【家畜を健康に飼う事で、人も環境も健康に】というBBCの活動やBBCの商品は、フランス政府により全国の栄養健康プログラムに採用され、欧州のウェイトコントロールラベルを受賞、また温暖化ガス削減方法として公的に認められています(家畜の排出するメタンガスを抑制)。

BBCの創始者の1人はブルターニュ地方の酪農家のピエールさんで、彼の牧場の農家民宿を訪ねてBBC設立の想いをお聞きしました。

「土から食物を育て、牛を飼い、農産品を提供している我々農家は食物連鎖の中心にいる。だからこそ、子供達や消費者、農畜産物、地球環境に対して責任を持たないといけない」という酪農家=生産者としての使命感や想いに共感し、BBCの技術を活かした酪農を開始しました。

その後、平成25年九州地域バイオクラスター推進協議会がフランスのBBCと包括連携協定を締結。

フランスのBBCとのMOU国際連携プロジェクトが開始しました。

当牧場では、BBCの技術を使用する事で牛を更に健康に飼うことができるようになり、乳量が増え、搾りたてのミルクから天然のオメガ3脂肪酸が多く検出されるようになりました。

現在、この若返り成分である『オメガ3脂肪酸が豊富なジャージーミルク』を活かした商品開発を進めております。

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■『MILK’ORO Aging Yogurt』の誕生

フランス オメガ3プロジェクトにより完成したのが『MILK’ORO Aging Yogurt』です。

このヨーグルトの特徴は、

① 日本版BBC規格ジャージー生乳使用:
オメガ3脂肪酸:アンチエイジング・アンチメタボ・血中脂肪低下作用が認められているオメガ3脂肪酸(αリノレン酸などの不飽和脂肪酸)のバランスに焦点を合わせたジャージー乳を使用。

② クリームトップ:乳脂肪を破壊せず、そのままヨーグルトにしました。上部に濃厚でクリームチーズのような層が形成されます。

③ エイジング:熟成式。出来立てはミルキーで甘く、次第に乳酸菌が増殖しながら熟成し、酸味と香りが出てきます。

④ 無添加:自家産生乳100%と国産の「甜菜糖」だけで作っています。(甜菜糖 :砂糖の中で唯一 体を温める作用があります。また、オリゴ糖を多く含み乳酸菌のための栄養が豊富で、腸内フローラを整えるための乳酸菌の良い栄養分です。)

商品名:MILK’ORO の由来は、【 MILK + ORO = 金色のミルク】。

当牧場のミルクの特徴を濃厚なクリームの層に表現し、『わが家のミルクの美味しさの違いを金色に磨き上げてヨーグルトにすることで、皆様に美味しいや健康といったキラキラした体験をお届けできる牧場になりたい。』という想いを込めております。

MILK’OROヨーグルトは、乳缶型の砡(ぎょく:白硝子ビン)を使用したオリジナルガラスビン入りなのですが、こちらの白いガラス=砡は、日本で1社しか製造されておらず、伊勢神宮のお神酒容器としても使用されている由緒正しいガラスビンです。

プロジェクトでフランスを訪れた時に、老舗のボン・マルシェやギャラリー・ラファイエットなどではヨーグルトはガラス瓶に入っており、現地の乳業メーカーさんに尋ねたところ、ガラス瓶や陶器入りが伝統的なヨーグルトの製法ということでした。(プラの素材では、ミルクにプラの臭いが移ったり、プラの溶剤が溶け出したりするおそれがある為、ガラス瓶が選ばれている。)

「全力でミルクを磨き上げたヨーグルトを、最高の状態でお客様のお腹までお届けする」為に、弊社フラッグシップのMILK’OROヨーグルトにはこの砡ガラス瓶しかないとお考え、砡を選びました。

ガラスなので陶器よりも強度が高く、天然素材で無臭のため、臭いの移りやすい乳製品向きの容器です。フランスなど欧州のスーパーマーケットでは、売り場の半分はガラス瓶のヨーグルトが並んでおり、食文化としてヨーグルトの容器にはガラスを使用する事が根付いております。

プロジェクトでの渡欧や個人旅行で世界中のヨーグルトを食べ歩いておりますが、2層式や熟成式ヨーグルトは売り場に3%あるかどうかで、ほぼ販売されておりませんでした。

日本でもノンホモのヨーグルトは製法が一般のものとは異なる為、市場には2層式のヨーグルトはほとんどありません。

その理由に下記のようなものがあります。

1:良質の濃い生乳だけを集乳できないため、薄い生乳でしか製造できない事

2:当牧場のようなノンホモ製法ができない事(製造が煩雑で、且つ、大手メーカーでの発酵施設ではヨーグルトに個体差ができるためクレームになるので作れない)

3:乳脂肪を分離して生クリームで販売される為、層ができない事

また、こうした特徴やおいしさを評価していただき、いくつかの賞や取材をしていただきました。

本当に有り難く、酪農家冥利に尽きます。

2017’JAPAN MADE BEAUTY AWARDS 最優秀賞受賞
2017' チームシェフコンクール最多投票
2017’OMOTENASHI SELECTION 金賞受賞
2017’日本の宝物グランプリ 熊本大会 グランプリ受賞
2018’にっぽんの宝物 JAPANグランプリ グランドグランプリ受賞
2018’にっぽんの宝物 WORLDグランプリ 準グランプリ受賞
2018’6次産業化アワード 農林水産大臣賞受賞
2018’地域未来牽引企業 選定
2019’ガイアの夜明け:にっぽんの宝物
2020’ガイアの夜明け:にっぽんの宝物 続編
2020’はばたく中小企業・小規模事業者300社 選定
2021’満天青空レストラン

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■牧場で生まれるひとつずつの命に舞台を作る。

酪農牧場では搾乳をすることが主な仕事になりますが、そのためにはメスが必要です。

しかしながら、生まれてくる仔牛は50%の確率でオスも生まれてきます。

牧場としては産乳できるメスしか必要ではないので、オスが生まれるとがっかりしてしまう自分が嫌でした。

しかも、ジャージー牛の仔牛の場合、他の牛種よりも小柄で肥育牧場のニーズが無い為に、生後2ヶ月育てて競売に出しても1000円くらいでしか売れないため、生後まもなく安楽死させたり屠殺されたり、命に価値がないような扱いをされる地域もあります。

あまりにも可哀想な命。

私は酪農家としてジャージー牛のオス子牛の命が輝く舞台を作ってあげられないかと悩みました。

メスが生まれたらミルクを乳製品に加工して美味しく提案できる。

でももし、オスが生まれたとしても、美味しいお肉になるように育ててみてはどうだろうか。

しかし、通常の肉牛は3年前後の長期の肥育が必要なため、餌代や施設のコストが大きくかかってしまう。

私は悩みました。

普通に肥育するのはやめよう。

肥育期間を1年くらいに短くできればコストも抑えられ、仔牛のお肉だからこその美味しさの提案ができるのではないか。

それから、オメガ3プロジェクトを仔牛肉にも応用し、オメガ3脂肪酸を強化する飼養方法で仔牛を育てていくことで、仔牛のお肉にもALAが検出されるようになりました。

また、オメガ3ミルクを産乳するための餌を生涯食べてきているジャージー母牛は、肉にもオメガ3が移行しています。 産乳量が減り経済動物としての価値がなくなってきたとしても、美味しいお肉になるように再肥育することで、彼女たちの命が最後に輝く舞台を作ってあげる事ができるようになるかもしれない。酪農家はプロデューサーとしてわが家で生まれた命に舞台を作って行くことが使命だと考えるようになりました。

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最後に。

2012年に製造を開始して10年。

2019年には新工場が竣工しました。

沢山の方のおかげさまで、少しずつ当牧場の居場所・ミルクの居場所ができて参りました。

本当に有難うございます。

朝昼夜の3つの食シーンに加え、「お料理に合う」おかず系のヨーグルトディップ、「おやつの時間に合う」おやつ系ヨーグルト、「大人の至福時間」に合うプレミアムスイーツ系など、3食+αの食シーンで美味しく弊社商品を食べていただけるような商品開発を通して、消費者の方に「美味しい!」をご提案していく事で、牛たちの育ての親として「わが子たちが一番輝ける舞台」を作りながら選ばれる生産者を目指して参りたいと考えております。